さよならPENTAX
さよならPENTAX
正月帰省中の怠惰な実家のこたつの中でふと思い立ち、はじめて一眼レフカメラを購入したのが2009年の早春。
それまでコンデジすら持っておらず、写真というものにおよそ興味がなかったのですが、当時付き合いはじめた女性との思い出を残そうか、どうしようか、という思いもあったか、なかったか、とにかくはじめて手にした一眼レフカメラがPENTAXでした。
一眼レフカメラに、PENTAXに、はじめて触れる
近所の友人がたまたまPENTAX使いで、まずは一眼レフとはなんぞや、というレクチャーを受ける。ほんのりフォーサーズdisが混じっていたのも未だに覚えています。翌日向かったビックカメラで、はじめて触った一眼レフカメラ。予算が限られている中で、どうもCanonのKiss X2は作りが安っぽくて、琴線に触れませんでした。ニコン?キムタク?よくわからない。そんな状態で、なぜか手のひらに馴染んだのが「PENTAX k-m」でした。
“ママ想いの世界最小” - PENTAX k-m
「PENTAX k-m」は“ママ想いの世界最小”というキャッチフレーズで、その頃はマイノリティというよりも、まだ皆無に近かった一般女性カメラユーザーを取り込むべく、当時HOYAによる買収直後のPENTAXブランドがドロップした、すこしだけ垢抜けたモデルでした。
ライブビューもなく、バッテリーが単三電池で重かったのですが、とにかくボディの作りが良いのが、素人目にも手にとって感じられました。
手に収めた時の感触。
一眼らしいデザイン。
少し派手なシャッター音。
はじめて一眼レフカメラを触った私に、とても魅力的に感じられました。レンズを交換した時のメカニカルな感じも、男子たるものの心をくすぐるものでした。
そうしてK-mのレンズキットを購入したのですが、以来「PENTAX K-5」に乗り換え、7年近くPENTAXを使ってきたことになります。
PENTAX k-m/キットレンズ 下手ですね。
愛機はPENTAX K-5へ
PENTAX、とくに「PENTAX K-5」というモデルは、私にとって一眼レフカメラで写真を撮る楽しみを覚える最適な選択だったと思っています。
私はPhotoshopもペラペラに使うことはできますが、基本、写真は撮って出し。撮って出しの画の色彩が鮮やかなのが、ペンタックスの特徴の一つかもしれません。
それは、Canonのナチュラルさから比べると、どこかチープに感じられることもあったのですが、赤は赤、青は青、はっきりと色がのったペンタックスの画作りはとても鮮烈で、愛すべきものでした。
smc PENTAX-DA 12-24mmF4
次第にレンズ資産も増えていき、隠れスターレンズなどとも言われる「FA35mmF2AL」、柔らかい描写が特徴的な「TAMRON SP AF 28-75mm F/2.8(モデルA09)」と、たて続けに購入。
すぐにk-mでは物足りなくなり、一眼レフデビューから2年足らずでK-5を購入。
このK-5が素晴らしかった。頼もしかった。
マグネシウム合金が採用されたコンパクトなボディは防塵・防滴仕様。まさに質実剛健。手に収めた時の感覚は、同クラスの全メーカーの中でも、群を抜いて良いものだった思っています。
さらに、k-mで不満だった高感度撮影時のノイズも大幅に軽減。程なくしてハマった工場夜景撮影で大活躍することになりました。
突き進むレンズ沼
smc PENTAX-DA 12-24mmF4
手持ちはポートレート向きのレンズだけ。解像力のある広角が欲しくなり、夜景撮影や、たまの海外旅行のために「smc PENTAX-DA 12-24mmF4」も購入。
突き進むレンズ沼。
この広角レンズは、絞った時の解像度と、ペンタックスらしい鮮やかな色彩が素晴らしく、天候がバッチリ決まった時の工場夜景を収めた写真は、我ながら深夜にひとり、飽きるまで眺めることができました。
そしてさらに、今度は逆にマニュアルレンズ沼に片足が落ちます。
マニュアルレンズ沼に落ちかける
Super-Takumar 55mm f1.8
オークションで何気なくゲットした「Super-Takumar 55mm f1.8」の柔らかくとろける描写にとことんハマり、ついには常時接続の標準レンズ化。
ひたすらマニュアルでピントを追い込む週末。
逃げる子ども。
追う、わたし。k-5。
我ながらよくやったものだと。
気付いたら、一眼に手を出すきっかけになったかどうだかわからなかった女性が伴侶となり、被写体に自分の子供が加わっていました。
マタニティフォト的なバカ写真や、天使のような子どもの表情は、ほぼすべてタクマーで撮影しました。
いつかこの辺のレンズちゃん達の思い出も、記憶に新しいうちに、詳しく書き留めておきたいと思っています。
FA35mmF2AL
親父のCanonとフルサイズ
私たちの間に子どもが生まれた頃、私の親父が定年で退職しました。
わたしのカメラ熱を見ていた親父が、会社都合による早期退職と年金によるプチバブルで財力にものを言わせて「Canon EOS 6D」を手に入れたのには、激しく衝撃を受けました。
PSAMモードもisoも何もわからないままデカいカメラを振り回し、シーンモードで適当にシャッターを押すと、とんでもない解像度と表現力の写真に仕上がるのです。
「フルサイズ恐るべし!」
黒船が来航した時の幕臣の心境というのでしょうか。
「エゲレスでは蒸気機関車といふ鉄の箱が走っているそうな。」
おもわずそんな情景が脳裏に浮かびました。
以来、わき起こるフルサイズ機への羨望と、PENTAXへの愛着。そしてk-5ですら大きく感じ、持ち出すのが億劫になっていた撮影スタイルの変化との葛藤がはじまりました。
子どもの写真を少しでもきれいに残したい、でも子どもを連れて出かける時は身軽でいたい。
パパです、パパです、ここにいます。
さよならPENTAX
きっかけとは、往々にして些細なものです。
まず、サイズのでかいフルサイズ機は真っ先に諦めました。k-5ですら持ちだすのをためらっていたのに、Canonのフルサイズなど、どこに持っていくのでしょう。うちはスタジオではありません。
ここでもたげたのが、正直見下していた「ミラーレス」という選択でした。
もはや、なぜだかは、はっきりとは覚えていません。
あの時の正月のこたつのように、今度は子どもが寝た後の自宅のソファの上で、悶々と価格comやブログを徘徊していました。
そして、自分でもまさかですが、しかし、ミラーレスの画質がここまで上がっていたことが、まさかという思いでした。
こんにちはFUJIFILM
悩み始めてからわずか、ひと月足らず。
いま、私の手元には富士フィルムにミラーレス機「FUJIFILM X-T10」があります。
「富士フィルム?」
Canonのフルサイズの画を見ていた妻には、当然はじめは反対されました。
正直、手元に届いた瞬間の自分もそんな気持ちでした。
「勢いに乗って、はやまったか?」
しかし、そんな妻を、自分の疑念を黙らせ、うならせるだけの画を、「X-T10」は吐き出してくれます。
そう、Canonのフルサイズに勝るとも劣らない解像力と、とろけるようになめらかな描写です。
毎日写真を眺めてはニヤついています。
PENTAXと過ごした7年近い日々は、たしかに私にとって、かけがえのないものでした。
しかし、PENTAXマウントのミラーレスを考えることは、不思議と一瞬たりともありませんでした。
私なりに、PENTAXを使って撮りきった、という思いになったのかもしれません。
これからはその思い出はFlickrにあげて、FUJIFILMちゃんと新しいカメラライフを送っていこうと思います。
さよならPENTAX。
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